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【研究成果】トドの赤ちゃんが動作とサインのつながりを学習し、見分けられることが世界で初めて明らかに!

本研究成果のポイント

 トドは0歳の仔獣期から、成獣と同じように動作とサインのつながりを学習し、弁別できる能⼒をもつことが、世界で初めて明らかになりました。

概要

 城崎マリンワールドで生まれたトドのカナタは⽣後半年までに9種類の動作とそれに対応するサインを学習し、トレーナーの性別や親密度(接した時間)によらず⾼い精度でサインを識別することができました。
 ハンドサインとボイスサインを同時に与えた場合、およびハンドサインのみを与えた場合の正解率は、9種類の動作全てで基準となる正解率を上回りました。
 ボイスサインだけを与えた場合の正解率は、3種類の動作を除き基準となる正解率を下回りました。

 本研究は、城崎マリンワールドの佐々木雅大氏、広島大学大学院人間社会科学研究科の神原利宗准教授らが執筆したもので、10月8日に「International Journal of Comparative Psychology」に掲載されました。城崎マリンワールドのトドの研究に関する国際論文では4本目、城崎マリンワールドで生まれたトドの「カナタ」に関する研究では初めてとなります。

研究成果の内容

  • トドは0歳の仔獣期から、成獣と同じように動作とサインのつながりを学習し、弁別できる能力をもつことが、世界で初めて明らかになりました。
  • トドの「カナタ」は生後半年までに9種類の動作とそれに対応するサインを学習し、トレーナーの性別や親密度(接した時間)によらず高い精度でサインを識別することができました。
  • ハンドサインとボイスサインを同時に与えた場合、およびハンドサインのみを与えた場合の正解率は、9種類の動作全てで基準となる正解率を上回りました。
  • ボイスサインだけを与えた場合の正解率は、3種類の動作を除き基準となる正解率を下回りました。

研究の背景

 トドをはじめとするアシカの仲間は、長い授乳期間をもち、赤ちゃんのころにトレーナーが介入してトレーニングを行うことが難しい特徴があります。そのため、赤ちゃんのトドの学習能力については、野生下での観察を除いて知られていませんでした。

 城崎マリンワールドで生まれたトドの「カナタ」は、母親が母乳で育てることが困難であったため、飼育員による人工哺育で育てられました。授乳期からトレーニングを行える特殊な環境から、貴重なデータを得られる可能性がありました。

 本研究はこれまで前例がなかった、赤ちゃんのトドの学習能力について調べたものです。

研究方法

 ハンドサインとボイスサインを同時に与えて9種類の動作でトレーニングを行いました。その後の実験で以下の3つの条件で「カナタ」にサインを与え、正解率を調べました。

 ①ハンドサインとボイスサイン同時
 ②ハンドサインだけ
 ③ボイスサインだけ

 目で見た情報と、耳で聞いた情報、どちらが学習において重要なのかを調べました。実験は男女3人ずつ、合計6人で行い、親密度や性別による影響を考慮しました。

資料映像:9つの動作とサイン

 最初はホースの水を使うなど遊びの中で動作を引き出し、ミルクを使って教えていきました。その後は、目印となる道具や手を使ったトレーニングも行い、生後半年までに9種類の動作ができるようになりました。

 各動作ができるようになった後は、決められた手の動き(ハンドサイン)と声(ボイスサイン)を同時に与えながら動作とむすびつけ、サインに合わせて動作を行うことをトレーニングしました。

資料映像:ホースの水で遊ぶカナタ

資料映像:はじめてトレーニングした”バイバイ”

資料映像:”あーん”のトレーニング

参考資料

図1.カナタ(授乳期)

図2.カナタ(現在)

論文情報

掲載雑誌名:International Journal of Comparative Psychology
DOI:https://doi.org/10.46867/ijcp.41525
タイトル:“A Case Study of Associations Between Human Visual-Vocal Commands and Behaviors in a Lactating Steller Sea Lion Pup (Eumetopias jubatus)”
著者:佐々木雅大氏1,堤和樹氏1,木下日奈乃氏1,西島昌宏氏1,松村千織氏1,豊田彩加氏1, 神原利宗2
所属:1城崎マリンワールド シーズー,2広島大学

【お問い合わせ先】

城崎マリンワールド シーズー
飼育員 佐々木 雅大 氏
TEL:0796-28-2300 
FAX:0796-28-3675
Email:seazoo*hiyoriyama.co.jp
 (*は半角@に置き換えてください)

広島大学大学院人間社会科学研究科 心理学プログラム
准教授 神原 利宗
TEL:082-424-6280 
FAX:082-424-3481
E-mail:tkambara*hiroshima-u.ac.jp
 (*は半角@に置き換えてください)


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